新規開拓

断られるのが怖い営業へ。「ノー」を数える、決まった一言を用意する、気持ちを早めに切り替える

電話をかける前に手が止まる、断られた日はその後の商談まで引きずる。そんな営業の方に向けて、海外の営業研修家ブライアン・トレーシー、ジェブ・ブラント、ジェフリー・ギトマーの考え方をもとに、断られることへの怖さを軽くする方法を、日本の職場で試しやすい形にまとめました。

断られるのが怖い営業へ。「ノー」を数える、決まった一言を用意する、気持ちを早めに切り替える

新規の電話をかける前に、受話器に手を伸ばしたまま止まってしまう。断られた日は、その後の商談でも声に元気が出ない。営業を続けていれば、誰でも一度はこんな経験があるのではないでしょうか。

断られるのが平気な人はほとんどいません。海外で人気の営業研修家ブライアン・トレーシーも、営業がうまくいかない最大の障害は、断られることへの恐れだと話しています。

この記事は、新規開拓や電話が苦手な方、断られると気持ちが沈んで次に動けなくなる方に向けて書いています。トレーシー、ジェブ・ブラント、ジェフリー・ギトマーの3人の考え方をもとに、怖さを軽くする方法を4つにまとめました。どれも「気合いで乗り切る」話ではなく、明日から試せる小さな工夫です。

以下の表・準備手順・架空の会話・チームでの取り組み・1週間の試し方は、出典の考え方をもとにした筆者の提案です。体調や業務量に合わせ、負担の少ないものを選んでください。

なぜ断られるのは、こんなに怖いのか

まず、怖さの正体を考えてみます。

営業で断られると、商品や提案ではなく、自分そのものを否定されたように感じてしまうことがあります。特に電話や飛び込みのように、相手の反応がすぐに返ってくる場面では、その感覚が強くなりがちです。

もう一つの理由は、一件一件の結果に期待をかけすぎてしまうことです。ブラントは、その案件がどうしても必要だと思うほど、かえって決まりにくくなると話しています。焦りが声や話し方に出て、相手に警戒されるからです。

つまり、怖さを軽くするには「断られても自分の価値は変わらない」と考え方を変えることと、「一件に期待をかけすぎない状態」をつくることの両方が役に立ちます。

方法1:「ノー」を数える

トレーシーが勧めているのは、断られるのを避けるのではなく、「いいえ」をもらいに行くという考え方です。英語では「Go for No(ノーを集めに行く)」と表現されています。

トレーシーは、断られた数が多い人ほど「はい」も多いと説明しています。これは本人の考え方であり、件数を増やせば必ず成果が増えるという保証ではありません。

トレーシーは、ある会社で「1日に何回『いいえ』をもらえるか」を競う取り組みをしたところ、楽しみながら声をかける数が増え、いちばん多く断られた人がいちばん成績が良かった、という事例を紹介しています。

ここからは筆者の応用です。成果目標とは別に、断られた数も記録してみる方法を提案します。以下の表の数字は比較のための例で、推奨件数やノルマではありません。

目標の置き方 断られたときの気持ち
今日はアポを3件取る 断られるたびに「また失敗した」と感じる
今日は「いいえ」を10回もらう 3回断られた時点で「あと7回」と捉えてみる

件数を決める場合も、勤務時間や体調に合わせた無理のない範囲にし、達成のために電話や残業を増やす必要はありません。数えることで負担が増すなら、この方法は使わなくてかまいません。

ただし、相手は「数」ではなく一人ひとりのお客様です。数を追うあまり、話を聞かずに電話を切るのでは意味がありません。丁寧に話し、それでも断られたら一つ数える、という使い方をしてください。

方法2:断られた瞬間の「決まった一言」を用意しておく

断られて頭が真っ白になるのは、次に何を言えばいいか決まっていないからでもあります。

ブラントは、断られた瞬間に動揺しないよう、反射的に言える一言(彼は「アンカー」と呼んでいます)を決めておくことを勧めています。たとえば、次のような言葉です。

  • 「多くの方がそうおっしゃいます」
  • 「まさに、その件でお電話しました」

上の言葉は要約をもとにした日本語の例で、逐語訳ではありません。「多くの方がそうおっしゃいます」は、実際にそうした経験がある場合だけ使ってください。明確に会話や連絡を断られたら、切り返しを重ねず終了します。

さらにブラントは、断り文句の種類は、思っているほど多くないとも話しています。ある業界で書き出してみたら、11種類ほどだったそうです。

ここから考えると、次のような準備ができます。

  1. これまでに言われた断り文句を、思い出せるだけ書き出す
  2. 似たものをまとめる(「今は忙しい」「資料だけ送って」「今の取引先で満足している」など)
  3. それぞれに、最初に返す一言と、その後の聞き方を決めておく

準備は、断られたときに言葉を選ぶ負担を減らす助けになるかもしれません。断り文句の種類と考え方は「断り文句は意外と種類が少ない」で詳しく紹介しています。

方法3:気持ちの切り替えを早くする

ギトマーは、態度は感情ではなく、自分で選ぶものだと話しています。起きた出来事は変えられなくても、それにどう向き合うかは自分で決められる、という考え方です。

彼は、嫌なことがあっても長く引きずらないことを勧めています。本人は、怒っても30秒ほどで切り替えるようにしていると話しています。

30秒は本人の習慣であり、誰もが同じ時間で切り替えられるという意味ではありません。気持ちが戻らなくても、努力不足と考える必要はありません。筆者の応用として、切り替えるきっかけを用意し、必要なら休憩する方法を提案します。

断られた直後にやること ねらい
席を立って水を一杯飲む 体を動かして、気持ちの流れを一度切る
管理表に「いいえ1」と書き込む 断られたことを「数」に変える(方法1とつなげる)
うまくいった商談のメモを1つ読み返す 自分にできることを思い出す
次にかける相手の情報を見る 頭を「次」に向ける

ギトマーは、毎朝、前向きな本を少し読む習慣も紹介しています。自分に合った習慣は、気持ちを整える助けになることがあります。

なお、落ち込みや眠れなさが続く、仕事や生活に支障がある、つらさが強い場合は、何週間も待たず、一人で抱え込まずに上司や会社の相談窓口、医療機関などに相談してください。ここで紹介しているのは日常の仕事上の工夫で、心の不調を治療する方法ではありません。

方法4:一件に期待をかけすぎない状態をつくる

最後は、仕組みの話です。

ブラントは、見込み案件が乏しいと焦りが生まれ、その焦りが相手に伝わると説明しています。ここからは筆者の応用ですが、見込みのあるお客様が少ないときは、一件の結果に気持ちが左右されやすくなることも考えられます。手持ちの案件が2件しかなければ、1件断られただけで大きな痛手になります。

毎日少しずつ新しいお客様に声をかけ、見込み客を切らさないようにすることは、一件の結果に期待を集中させすぎない助けになるかもしれません。

ブラントは、法人営業であれば、1日1〜2時間の新規開拓を続けることで、たいていは見込み客を十分に確保できるとの考えを示しています。もちろん、必要な時間は扱う商品や業界によって違います。まずは毎日決まった時間に、短くてもいいので続けることから始めてみてください。時間の確保の仕方は「新規開拓は「やる気」ではなく「時間割」で続ける」で紹介しています。

1〜2時間はブラント本人の目安で、成果を保証する数字や、一律に確保すべき時間ではありません。勤務時間内で、他の業務や休憩と両立できる範囲で考えてください。

具体例:同じ「いいえ」でも、受け止め方で次が変わる

ここでは、考え方の違いを分かりやすくするために、架空の例を紹介します。新規の電話で、受付の方から断られた場面です。

引きずってしまう例

受付:「申し訳ありませんが、営業のお電話はおつなぎしていないんです」 営業:「そうですか……失礼しました」 (電話を切ったあと、「やっぱり電話は向いていない」と考え込み、次の電話をかけるまでに20分かかる)

切り替えられる例

受付:「申し訳ありませんが、営業のお電話はおつなぎしていないんです」 営業:「承知しました。お時間をいただき、ありがとうございました。失礼いたします」 (電話を切ったあと、管理表に「いいえ1・営業電話の取り次ぎ不可」と書く。水を一口飲み、必要なら休憩してから次の業務を確認する)

後者は相手の方針を尊重して電話を終え、記録や休憩に移る例です。次の約束を取れなくても、丁寧に終了できれば十分です。すぐ次の電話に向かうことだけを、良い対応の基準にする必要はありません。

チームでできること

断られることへの怖さは、安心して話せるチームで共有すると、負担が軽くなることがあります。営業の責任者やチームのリーダーの方は、次のような取り組みも考えてみてください。

  • 断り文句と返し方を、チームで集める:一人が書き出せる断り文句には限りがあります。みんなで持ち寄れば、準備の質が上がります
  • 「いいえ」の数も話題にする:成果の報告だけでなく、「今週は何回声をかけたか」を聞くと、行動していること自体が認められる雰囲気になります
  • 断られた経験を安心して話せる場をつくる:トレーシーの事例を参考に、断られることを特別な失敗として扱わないようにします

参加や経験の共有は任意とし、件数での順位付けや人事評価、笑って話すことの強要は避けてください。体調や業務量を踏まえ、件数を押し付けない運用にしてください。

4つの方法を、1週間で試してみる

一度に全部を始める必要はありません。たとえば、次のような順番で試してみてください。

日 やること
1日目 これまでに言われた断り文句を書き出す
2日目 よくある断り文句3つに、最初に返す一言を決める
3日目 通常の業務量の範囲で、断られた数も記録する(負担ならやめる)
4日目 断られた直後にやることを1つ決めて、試す
5日目 件数と負担感を振り返り、続けるか、方法や業務量を調整するか考える

5日目に数えてみると、自分の行動に気づき、自信につながる場合もあります。つらさが増したなら、件数を増やすより休憩や相談を優先してください。

よくある質問

断られる数を目標にすると、雑な営業になりませんか?

数を追うことが目的になると、その心配はあります。断られる数は、あくまで怖さを軽くするための数え方です。一人ひとりのお客様には丁寧に話し、そのうえで断られたら数える、という順番を守ってください。

決まった一言を言うと、相手に台本っぽく聞こえませんか?

最初はぎこちなく聞こえるかもしれません。自分の普段の言葉づかいに直してから使い、何度か口に出して練習すると、自然に言えるようになります。電話の流れ全体は「新規の電話で売るのは「商品」ではなく「10分の面談」」も参考にしてください。

どうしても電話が苦手です。ほかの方法ではだめですか?

メールや手紙、紹介など、ほかの方法で新しいお客様と出会うことも、もちろんできます。ただ、どの方法でも断られることはあります。この記事の考え方は、電話以外の方法にも使えます。

まとめ

断られるのが怖いのは、営業として自然なことです。大切なのは、怖さをなくすことではなく、怖さに振り回されない工夫を持っておくことです。

  • 「いいえ」を数えて、断られることを「進んでいる証拠」に変える
  • 断られた瞬間に言う一言を、あらかじめ決めておく
  • 気持ちを切り替えるきっかけを、自分で決めておく
  • 毎日少しずつ声をかけ続け、一件に期待をかけすぎない状態をつくる

まずは、明日の電話の前に、よく言われる断り文句を一つ思い出して、返す一言を決めてみてください。準備が、電話をかける前の負担を少し軽くする助けになるかもしれません。

参考にした動画・資料

動画の内容をもとに、編集部が日本の営業向けに要点をまとめ直したものです。発言の全文訳ではありません。

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