新規開拓

新規開拓は「やる気」ではなく「時間割」で続ける。毎朝の開拓タイムのつくり方

案件が減ってから慌てて新規開拓をする、を繰り返していませんか。海外のトップ営業たちが口をそろえる「パイプラインが空になることが最大の失敗」という考え方と、毎日少しずつ開拓を続けるための時間の取り方をまとめました。

新規開拓は「やる気」ではなく「時間割」で続ける。毎朝の開拓タイムのつくり方

今月は案件が多くて忙しい。だから新規開拓は後回し。そして数か月後、案件が一気に減って、慌てて電話をかけ始める。営業をしていると、こうした「波」に覚えがある方も多いのではないでしょうか。

この記事は、新規開拓が続かない方、忙しくなると開拓が止まってしまう方、チームの開拓量を安定させたい営業マネージャーに向けて書いています。海外で新規開拓の第一人者として知られる人たちの考え方をもとに、毎日少しずつ開拓を続ける仕組みを紹介します。

案件の数は、数か月前の行動に左右される

米国の営業研修会社 Sales Gravy を率いるジェブ・ブラントは、講演の中で「営業が失敗するいちばんの理由は、パイプライン(見込み案件)が空になることだ」と繰り返し語っています。そして、パイプラインが空になる理由は、毎日、新しい見込み客を探す行動をしていないからだ、と。

新規開拓の成果は、すぐには出ません。今日かけた電話が商談になり、受注するまでには、数週間から数か月かかります。季節や市場の動きなど、ほかの理由もありますが、今月の案件の少なさには、数か月前に開拓が減ったことが影響している可能性があります。

忙しい月ほど開拓が止まり、数か月後に案件が減る。案件が減ると焦って開拓し、また忙しくなって止まる。この波を断ち切るには、忙しさに関係なく、毎日少しずつ開拓を続けるしかありません。

焦りは相手に伝わる

案件が少なくなると、営業は焦ります。そして、焦りは相手に伝わります。

ブラントは、これを「必要の法則」と呼んでいます。その案件が必要であればあるほど、決まりにくくなる。今月の数字が足りないほど、達成しにくくなる。焦って必死になる営業からは、人は買いたくないからです。

毎日少しずつ開拓を続けていれば、一つの案件に頼りきる必要がなくなります。気持ちに余裕があるから、落ち着いて商談に臨めます。開拓を続けることは、商談の質を上げることにもつながるのです。

開拓の時間を「予定」として先に入れる

では、どうすれば毎日続けられるのでしょうか。答えは、やる気ではなく時間割です。

開拓の時間は、自分で取らない限り生まれない

『New Sales. Simplified.』の著者マイク・ワインバーグは、「開拓の時間は、自分から取りにいかない限り、絶対に生まれない」と話しています。開拓より簡単な仕事、急ぎの仕事は、いつでもあるからです。

人は、重要な仕事よりも、簡単で細かい仕事から手をつけてしまいがちです。メールの返信、資料の手直し、社内の報告。気づけば一日が終わっていて、開拓は「明日まとめてやろう」になります。そして明日も、同じことが起きます。

朝いちばんに入れる

ブラントは、開拓の時間を朝いちばんに入れることを勧めています。理由は3つあります。

  1. 嫌なことを先に片づけると、その日の残りが楽になる
  2. 朝は、相手も席にいて電話に出やすい
  3. 朝は自分も疲れていないので、断られても切り替えやすい

メールやチャットを開く前に、まず開拓の時間を終わらせる。これを習慣にするだけで、開拓が後回しになることはぐっと減ります。

時間の長さの目安

営業のタイプ 1日の開拓時間の目安
法人向けの外回り営業 1〜2時間
内勤の営業(インサイドセールス) 3時間前後を、いくつかに分けて
既存客中心のルート営業 30分〜1時間

ブラントは、法人営業なら1日1〜2時間の開拓で、たいていはパイプラインを埋められると話しています。大切なのは長さよりも、毎日続けることです。毎日の積み重ねは、あとから大きな差になります。

開拓の時間の使い方

下調べと電話は、時間を分ける

開拓の時間に、1件ずつ相手の会社を調べてから電話していると、1時間で数件しかかけられません。

『The Sales Blog』で知られるアンソニー・イアナリーノは、下調べと電話を別の時間にすることを勧めています。前日の夕方などに、翌朝かける相手のリストと、それぞれの会社について一言メモをつくっておく。朝の開拓の時間は、電話することだけに集中します。

15分ずつ区切る

1時間ずっと電話し続けるのは、慣れていても大変です。ブラントの会社では、15分だけ全力でかけて、少し休む、を繰り返す方法も使っているそうです。

短く区切ると、「あと15分だけ」と思えるので、気持ちの負担が減ります。チームで同じ時間に一斉に取り組むと、お互いに励みにもなります。

気が散るものを閉じる

開拓の時間は、メール、チャット、ブラウザのほかのタブを閉じます。通知も切ります。ほかの作業が少しでも目に入ると、すぐにそちらに流れてしまうからです。

断られることへの怖さを減らす

開拓が続かない理由の一つは、断られるのが怖いことです。

「ノー」の数を数える

営業研修の講演家ブライアン・トレーシーは、「ノーを集めに行く」という考え方を紹介しています。断られることを避けるのではなく、今日何回「いいえ」をもらえたかを数える。断られた数が多いということは、それだけ多くの人に声をかけたということです。

トレーシーは、ある会社で「1日に何回断られたか」を競うゲームをしたところ、営業たちが楽しみながら件数を増やし、いちばん多く断られた人が、いちばん成績が良かったという例を紹介しています。

「今日はアポを3件取る」という目標は、相手次第なので達成できない日もあります。「今日は20件電話をかける」なら、自分で管理しやすい行動の目標になります。話せた人数やアポの数は、結果として別に記録しましょう。目標は、結果だけでなく行動の数でも立てると、毎日の達成感が生まれます。

「あと1本」

ブラントは講演の最後に、こう語っています。疲れていても、断られ続けても、もう無理だと思っても、あと1本だけ電話をかける。その1本が、普通の営業とトップ営業を分けるのだ、と。

毎日の開拓の時間の最後に、「あと1本」を習慣にしてみてください。

誰に連絡するかを先に決める

時間を取っても、「誰に連絡するか」が決まっていなければ、開拓は進みません。

イアナリーノは、まず「理想のお客様」を60社リストにすることを勧めています。週に15社ずつ連絡すれば、1か月で一巡できます。反応がなければ、電話、メール、手紙、SNSと方法を変えて、また連絡します。

リストづくりのときは、次の点を考えます。

  • 自社の商品がいちばん役に立つのは、どんな会社か
  • 今のお客様の中で、特に満足してくれているのは、どんな会社か
  • その会社と似た業種・規模・地域の会社はどこか

また、いちばん良い見込み客は、今のお客様からの紹介です。紹介をお願いすることも、立派な開拓です。

新人やチームで取り組むとき

開拓に慣れていない人には、最初から大量のリストを渡さないことが大切です。

ブラントは、自分の息子に電話営業を教えたとき、15件かけたら休憩、を繰り返したと話しています。小さく区切ったので負担が少なく、結果的に1日にかなりの件数をこなせたそうです。

また、新人に「誰も手をつけていない、反応の悪いリスト」を渡すと、成功体験がないまま嫌になってしまいます。最初は、反応が見込めるリストを渡す。小さな成功を積み重ねてから、難しいリストに進みます。

毎日の開拓チェックリスト

  • 開拓の時間を、カレンダーに予定として入れたか
  • その時間は、朝いちばんか
  • 前日のうちに、連絡する相手のリストをつくったか
  • 開拓の時間中は、メールや通知を閉じたか
  • 目標を「電話した件数」など、行動の数でも立てたか
  • 最後に「あと1本」かけたか
  • 理想のお客様のリストを、毎週見直しているか

よくある失敗

よくある失敗 直し方
忙しい月は開拓を止める 時間を短くしてもいいので、毎日続ける
夕方に開拓しようとして、結局やらない 朝いちばんに予定として入れる
1件ずつ調べてから電話する 下調べは前日に済ませ、開拓の時間は電話に集中する
「アポ◯件」だけを目標にする 「◯件電話する」など、行動の数も目標にする
新人にいきなり大量のリストを渡す 小さく区切り、反応が見込めるリストから始める

具体例:ある営業の1週間

法人向けの業務ソフトを売る営業が、開拓の時間を取り入れた1週間の例です。

曜日 朝の開拓の時間(9:00〜9:45) 前日の夕方の準備
月 先週問い合わせがあった会社に電話(15件) 問い合わせリストを整理
火 理想のお客様リストのうち、製造業15社に電話 15社の事業内容を一言メモ
水 既存のお客様に、紹介のお願い(5件) 紹介をお願いできそうな相手を選ぶ
木 以前「今は見送り」となった会社に状況確認(15件) 当時の記録を見直す
金 今週電話がつながらなかった相手に、メールと電話 1週間の結果を集計

ポイントは、毎日の開拓の中身に変化をつけていることです。新規の電話だけでなく、紹介のお願いや、過去の見送り案件の掘り起こしも、立派な開拓です。毎日同じことを続けるよりも、飽きずに続けやすくなります。

金曜日の夕方には、話せた人数、アポの数、断られた数を記録します。数週間続けると、自分の開拓の「打率」が見えてきます。

よくある質問

既存のお客様の対応で、朝から忙しい日はどうすればいいですか?

その日は、開拓の時間を短くしても構いません。大切なのは、ゼロにしないことです。15分だけでも、3件だけでも続けることで、「開拓は毎日やるもの」という習慣が保たれます。急な対応が入ったら、その日の夕方に短い時間を取り直しましょう。

開拓の成果が出るまで、どのくらいかかりますか?

商材や業界によって違いますが、新規の電話から受注までは、数週間から数か月かかることが一般的です。始めてすぐに成果が出なくても、焦る必要はありません。まずは1か月、毎日の時間を守ることを目標にしてみてください。

チームで取り組むときのコツはありますか?

同じ時間帯に、チーム全員で一斉に開拓の時間を取る方法がおすすめです。周りも電話していると、自分も取り組みやすくなります。終わったあとに、うまくいった言い回しや、よく言われた断り文句を5分だけ共有すると、チーム全体の質が上がっていきます。

まとめ

新規開拓が続かないのは、意志が弱いからではありません。時間割がないからです。

  1. 今月の案件の少なさには、数か月前の開拓の減少が影響していることがある
  2. 開拓の時間は、朝いちばんに予定として先に入れる
  3. 下調べと電話は時間を分け、開拓の時間は電話に集中する
  4. 目標は行動の数で立て、断られた数も成果として数える
  5. 最後に「あと1本」

明日の朝、メールを開く前の30分を、開拓の時間にしてみてください。小さな習慣が、数か月後の案件の数を変えていきます。

参考にした動画・資料

動画の内容をもとに、編集部が日本の営業向けに要点をまとめ直したものです。発言の全文訳ではありません。

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