新規開拓

新規の電話で売るのは「商品」ではなく「10分の面談」。断られにくいアポ取りの型

電話で商品を説明し始めた瞬間、「結構です」と言われていませんか。海外の営業研修で定番の考え方をもとに、電話の目的を「次に会う約束」に絞った話し方と、よくある断りへの返し方をまとめました。

新規の電話で売るのは「商品」ではなく「10分の面談」。断られにくいアポ取りの型

新規開拓の電話で、名乗ったとたんに「結構です」と切られる。少し話を聞いてもらえても、商品の説明を始めると「今は必要ありません」で終わってしまう。電話で新規開拓をしている人なら、誰もが経験していることです。

この記事は、テレアポや新規開拓の電話が苦手な方、件数はかけているのにアポにつながらない方に向けて書いています。海外の営業研修で長く教えられてきた考え方をもとに、日本の法人営業で使いやすい形に整理しました。

電話の目的を一つに絞る

電話がうまくいかない一番の原因は、電話で商品を売ろうとしてしまうことです。

電話で商品を説明し始めると、相手はその場で「必要かどうか」を判断しなければなりません。何の準備もない状態で判断を迫られれば、多くの人は「いりません」「お金がありません」「時間がありません」と答えます。断るのが、いちばん簡単だからです。

米国の営業研修の第一人者として知られるブライアン・トレーシーは、講演の中で「電話で売るのは商品ではなく、面談の時間だ」と繰り返しています。電話のゴールは、相手に買ってもらうことではなく、「一度、話を聞いてもいい」と思ってもらうことです。

電話で売ろうとするもの 相手が判断すること 断られやすさ
商品・サービス 買うか、買わないか 高い
面談の時間(10分程度) 話を聞くか、聞かないか 低い

目的を「次に会う約束」に絞るだけで、話す内容はぐっと短くなります。

電話は相手の仕事への「割り込み」

もう一つ押さえておきたいのは、どんな電話も、相手にとっては仕事中の割り込みだということです。

新規開拓の第一人者ジェブ・ブラントは、「相手が予想していない電話は、新規でも紹介でも既存のお客様でも、すべて割り込みになる」と話しています。自分が忙しいときに知らない人から電話を受けたら、誰でも少しイライラします。そのとき望むのは、要点だけを話して、早く終わってくれることです。

だからこそ、新規の電話は次の3つを意識します。

  • 短く:1本の電話は、受付を通ってから2〜3分で終わるのが理想
  • 要点から:名乗りと目的を、最初の30秒で伝える
  • 毎回同じ型で:話す順番を決めておけば、迷わず、相手の時間も奪わない

型が決まっていると、1本あたりの時間が短くなり、同じ時間でより多くの相手と話せます。気持ちの負担も減ります。

最初の30秒で何を言うか

営業研修会社を経営するジェレミー・マイナーは、「◯◯社の△△です。本日お電話したのは〜」という決まった名乗り方が、かえって断りを引き出していると指摘しています。毎日かかってくる営業電話と同じに聞こえるため、相手が反射的に身構えてしまうのです。

そこで、最初の一言は「自社の商品」ではなく、相手が抱えていそうな問題から入ります。ポイントは、問題があると決めつけず、「もしあるとしたら」と中立的に投げかけることです。

「株式会社◯◯の△△と申します。突然のお電話で失礼いたします。御社で、毎月の請求書の発行に時間がかかっていて、担当の方の残業が増えている、ということがもしあれば、その改善について10分ほどお話しできればと思いお電話しました。こうしたお話は、どなたにお伝えするのがよいでしょうか?」

この言い方には、いくつかの工夫があります。

  • 問題を言い切らない:「時間がかかっていますよね?」と決めつけると、「うちは大丈夫です」と反発されやすくなります
  • 困った結果まで言う:「請求書の発行」だけでなく「担当者の残業が増えている」まで言うと、相手は自分の会社のことかどうかを考えやすくなります
  • 担当者を尋ねる:「どなたにお伝えするのがよいでしょうか」と聞くと、本人なら「それは私です」と答えやすく、別の担当者なら紹介してもらえます

業種ごとに、「問題」と「困った結果」の組み合わせを、あらかじめ3つほど用意しておきましょう。

業種の例 問題 困った結果
製造業向けの設備保守 機械の点検が担当者任せになっている 急な故障で生産が止まる
物流業向けの採用支援 求人を出しても定着しない トラックを動かせない日が出る
小売業向けの業務ソフト 在庫の数え直しに時間がかかる 閉店後の残業が続く

「10分だけ」と「ご判断ください」

相手が「それは何ですか?」と興味を示したら、ここで商品の説明を始めたくなります。でも、ここが我慢のしどころです。

トレーシーは、ここで10分の面談だけをお願いするよう勧めています。

「ありがとうございます。電話だと分かりにくいので、10分だけお時間をいただけませんか。実際にお見せしますので、御社に合うかどうかは、ご自身でご判断ください。」

このお願いには、2つの効果があります。

  • 10分:30分や1時間をお願いすると、予定がなかなか空かず、何週間も先になりがちです。10分なら、予定の合間に入れてもらいやすくなります
  • ご自身でご判断ください:判断は相手に任せる、という姿勢が伝わり、押し売りされる心配が減ります

オンライン商談が当たり前になった今は、「15分ほど、オンラインで画面をお見せしながら」とお願いするのも有効です。

よくある断りへの返し方

電話での断りは、実はそれほど種類がありません。よくある4つへの返し方を用意しておきましょう。

「いくらですか?」

まだ何をするものかも伝わっていないのに、価格だけを聞かれることがあります。ここで金額を答えると、「高いですね」で終わりがちです。

「御社の状況によって変わるので、一概には言えないのですが、お話を伺って合わないようであれば、費用は一切かかりません。まずは10分だけ、状況を伺えますか?」

「資料を送ってください」

資料の送付をお願いされたら、断りの合図であることも少なくありません。送った資料は、そのまま読まれずに終わることが多いのです。

「ありがとうございます。お送りします。ただ、資料だけだと御社に当てはまる部分が分かりにくいので、お送りしたあと、10分だけ要点をご説明する時間をいただけますか?」

資料を送ること自体は断らず、次の約束とセットにするのがポイントです。

「今は忙しいので」

「お忙しいところ失礼しました。では、改めてお電話するなら、いつ頃がよろしいでしょうか?」

その場で、次に電話する日時を決めてもらいます。「また連絡します」で終わらせないことが大切です。

「来週、また電話してください」

「承知しました。せっかくなので、今カレンダーを見ながら決めてしまってもよろしいですか?来週の火曜の10時はいかがでしょう?」

先送りの約束は、そのまま流れてしまうことが多いものです。可能なら、その場で日時まで決めてしまいましょう。

受付を通るときの一言

法人への電話では、最初に受付や代表電話につながることがほとんどです。いきなり「◯◯の担当者様をお願いします」と言うと、「どのようなご用件でしょうか」と聞かれ、営業だと分かった時点で断られてしまいます。

マイナーは、受付の方には「担当の方に留守番電話を残したいので、つないでいただけますか」とお願いする方法を紹介しています。直接話すよりも、受付の方が回しやすいからです。日本の会社では留守番電話が少ないので、次のように言い換えると使いやすくなります。

「◯◯の件でご相談したく、ご担当の方にご伝言だけでもお願いできればと思いお電話しました。ご担当の方は、どちらの部署になりますでしょうか?」

伝言でもよい、と言われると、受付の方は担当部署を教えやすくなります。部署と担当者の名前が分かれば、次からは直接つないでもらえます。

電話の前の準備チェック

電話をかける前に準備しておくと、用件を短く、分かりやすく伝えられます。かける前に、次の項目を確認しましょう。

  • 電話の目的を「10分の面談の約束」に絞ったか
  • 相手の業種に合わせた「問題」と「困った結果」を3つ用意したか
  • 最初の30秒で言うことを、紙に書いておいたか
  • 「いくらですか」「資料を送って」「忙しい」「また電話して」への返しを用意したか
  • 面談の候補日時を、すぐ言えるようにしたか
  • 電話をかける時間帯を決めて、その時間はほかの作業をしないようにしたか

よくある失敗

よくある失敗 直し方
名乗ってすぐ、商品の説明を始める 相手の問題から入り、目的は面談の約束に絞る
「お時間よろしいですか?」から入る 名乗ったら、すぐに用件を伝える
断られたら、何も聞かずに引き下がる 用意した返しを一度だけ伝え、それでも難しければ丁寧に終える。はっきり断られたら勧誘はしない
何度も同じ相手にしつこく電話する 次に連絡する日を約束し、その日に一度だけかける
毎回、話す内容がばらばら 型を決めて、結果を見ながら少しずつ直す

具体例:電話の前と後でこう変わる

業務用の清掃サービスを売っている営業が、オフィスビルの管理会社に電話する場面で比べてみます。

よくある電話

「お世話になります。株式会社◯◯の△△と申します。本日は、当社の清掃サービスのご案内でお電話しました。当社は創業30年で、オフィスビルを中心に500件以上の実績があり、料金も業界の中ではお手頃で……」

「すみません、今の業者で間に合っていますので。」

型を使った電話

「株式会社◯◯の△△と申します。突然のお電話で失礼いたします。管理されているビルで、テナントの方から清掃についてのご要望が増えている、ということがもしあれば、その対応について10分ほどお話しできればと思いお電話しました。こうしたお話は、どなたにお伝えするのがよいでしょうか?」

「それなら私ですが……どういうことですか?」

「ありがとうございます。ほかの管理会社さんで、テナントの入れ替わりの時期に清掃の要望が集中して困っている、というお話をよく伺うんです。電話だと分かりにくいので、10分だけお時間をいただけませんか。お見せしますので、合うかどうかはご判断ください。」

後者は、自社の説明をほとんどしていません。相手が「自分のことかも」と思える問題を投げかけ、面談の約束だけをお願いしています。

よくある質問

断られた相手に、また電話してもいいですか?

この記事は、法人どうしの取引を前提にしています。法人の取引でも、はっきり断られたら、その場で勧誘を終えます。改めて連絡するのは、「◯か月後なら」など相手の了承がある場合に限りましょう。なお、個人のお客様向けなど、特定商取引法の対象となる電話勧誘販売では、契約しない意思を示した相手への勧誘を続けたり、改めて勧誘したりすることは禁止されています。断られた内容は、顧客管理の記録に残しておきましょう。

1日に何件くらいかければいいですか?

業種や商材によって大きく違います。件数を決めるより、まず「毎日、決まった時間に電話する」ことを優先しましょう。続けていくうちに、自分の商材で何件かけると何件のアポになるのかが見えてきます。その数字から、必要な件数を逆算します。

台本どおりに話すと、不自然になりませんか?

台本を一字一句読むと、確かに不自然になります。大切なのは、話す順番と要点を決めておくことです。言い回しは、自分の言葉に置き換えて構いません。何度か電話するうちに、自分に合った言い方が固まってきます。

まとめ

新規の電話がうまくいかないのは、話し方が下手だからではなく、電話でやろうとしていることが多すぎるからかもしれません。

  1. 電話で売るのは商品ではなく、10分の面談
  2. 電話は相手の仕事への割り込み。短く、要点から、同じ型で
  3. 最初の一言は、相手の問題を「もしあるとしたら」と投げかける
  4. 判断は相手に任せ、「ご自身でご判断ください」と伝える
  5. よくある断りへの返しは、事前に用意しておく

まずは明日の電話で、「最初の30秒で言うこと」を紙に書いてから受話器を取ってみてください。それだけで、電話の手応えは変わってきます。

参考にした動画・資料

動画の内容をもとに、編集部が日本の営業向けに要点をまとめ直したものです。発言の全文訳ではありません。

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