AI活用

商談前の企業調べにAIを使う。10分を目安に進める、頼み方と確かめ方の手順

商談の前に、相手の会社の公開情報をAIで手早く整理する方法を解説します。そのまま使える頼み方の例文、AIの答えを確かめる手順、AIに入れてはいけない情報、最初の質問への落とし込み方までまとめました。

商談前の企業調べにAIを使う。10分を目安に進める、頼み方と確かめ方の手順

商談の前に相手の会社を調べたいけれど、時間が取れない。ホームページを開いても、どこを読めばいいか分からない。そんな営業担当者に向けた記事です。

ChatGPT・Gemini・Claude などの対話型AIを使うと、公開情報の整理にかかる時間をかなり短くできます。ただし、AIの答えには間違いが混ざることがあり、入力した情報の扱いにも注意が必要です。この記事では、AIに「まとめ役」を任せ、最後の確認は自分でするという前提で、10分を目安に下調べを進める手順を紹介します。

なお、AIのサービスは機能も設定も頻繁に変わります。この記事に書いたサービスの仕様は、2026年11月7日に確認した内容です。

AIに任せること、自分でやること

最初に役割を分けておくと、AIの答えに振り回されにくくなります。

AIに任せること 自分でやること
公開情報を読んで、要点を短くまとめる まとめの元になったページを開いて確かめる
事業内容や最近の発表を、項目ごとに整理する 数字・日付・人名が正しいかを確認する
相手が抱えていそうな課題の「仮説」を出す 仮説を、商談で本人に聞いて確かめる
最初の質問の案をいくつか出す 自分の商材と相手に合う質問を選ぶ

AIが得意なのは、たくさんの文章を読んで短くまとめることです。一方で、AIはもっともらしい間違いを書くことがあります。存在しないニュースや、古い役員名、別の会社の数字が混ざることもあります。まとめを読んで「分かった気」になる前に、必ず元のページを確認しましょう。

使う前に確認しておく3つのこと

1.会社のルール

まず、勤務先でAIの利用ルールが決まっているかを確認します。会社が契約したAIだけを使ってよい、顧客情報は入れてはいけない、といった決まりがあることも多いです。ルールがない場合も、上司や情報システムの担当者に一度聞いておくと安心です。

国も、AIを業務で使う事業者向けに「AI事業者ガイドライン」を出しています(総務省・経済産業省)。会社としてのルールづくりの参考になります。

2.入力した内容がどう扱われるか

サービスによっては、入力した内容がAIの改善(学習)に使われることがあります。たとえばChatGPTの場合、無料版などの個人向けプランでは、学習に使う設定が初期状態でオンになっています。設定画面の「データコントロール」から止めることができます。一方、ChatGPT Business や Enterprise などの法人向けプランでは、初期状態で学習に使われません。なお、個人向けプランで設定を止めていても、回答に「良い・悪い」の評価を付けると、その会話が改善に使われる場合があります(いずれもOpenAI ヘルプセンター、2026年11月7日確認)。

ほかのサービスでも、似た設定があることが多いです。使う前に、そのサービスの説明ページで確認しておきましょう。

3.AIに入れない情報

公開情報の整理だけなら、入れる情報は「相手の会社名」と「公開されているページの内容」で足ります。次のような情報は入れないようにします。

  • お客様から聞いた、公開されていない話(社内の事情、予算、困りごと)
  • 担当者の個人の連絡先や、名刺の情報
  • 自社の見積もり・原価・契約条件などの社外秘の情報
  • 商談の録音や議事録をそのまま

「この情報が外に出たら困るか」と考えて、困るものは入れない。迷ったら入れない、と決めておくと判断が早くなります。

10分を目安に進める下調べの手順

手順1:調べる目的を一文で決める(1分)

いきなりAIに「〇〇社について教えて」と聞くと、会社概要が長々と返ってきて、商談で使える情報が埋もれます。先に、何のために調べるのかを決めます。

来週の初回商談で、相手の事業の現状を知り、最初の質問を決めたい

この一文があるだけで、AIへの頼み方も、読むべき情報もしぼれます。

手順2:AIに公開情報の整理を頼む(3分)

Web検索ができるAIなら、会社名を伝えて整理を頼みます。頼み方の例です。そのまま使えるように、項目と形を指定しています。

あなたは法人営業の下調べを手伝うアシスタントです。 「株式会社〇〇(〇〇県、〇〇業)」について、公開情報をもとに次の項目を整理してください。

  1. 事業の内容(3行以内)
  2. 主なお客様・取引先の種類
  3. ここ1年の主な発表やニュース(日付つき)
  4. 会社が力を入れていそうなこと

条件:

  • それぞれの情報に、もとになったページのURLを付けてください
  • 確認できなかった項目は「確認できず」と書き、推測で埋めないでください
  • 事実と推測は分けて書いてください

検索ができないAIを使うときや、参照する情報を自分で指定したいときは、相手のホームページの「会社概要」や「ニュース」のページを開き、文章をコピーして貼り付けます。

以下の本文だけを使って、上と同じ4つの項目を整理してください。本文に書かれていないことは「確認できず」としてください。

元のURL:〇〇 本文:(ここに貼り付け)

貼り付けた場合でも、AIが読み違えることはあります。確かめる手順は省かないようにしましょう。

最初の頼み方のポイントは、最後の3つの条件です。URLを付けてもらうと、あとで確かめるのが楽になります。「分からないものは分からないと書いて」と頼むと、空欄を推測で埋められる失敗が減ります。

手順3:元のページを開いて確かめる(3分)

AIのまとめを受け取ったら、次の順で確認します。

  1. 付いているURLを開き、そのページが本当にあるかを見る
  2. 数字・日付・人名・商品名が、ページの内容と一致しているかを見る
  3. ニュースの日付が古すぎないかを見る(1年以上前の話を「最近」と思い込まない)
  4. 同じ名前の別の会社と混ざっていないかを見る(所在地や業種で確認)

全部を確かめる時間がなければ、商談で口に出すつもりの情報だけは必ず確認します。「御社の新工場の件で」と話しかけて、それが別の会社の話だったら、信頼を大きく損ねてしまいます。

手順4:仮説と最初の質問に落とし込む(3分)

確かめた情報だけを抜き出して、AIに渡し直します。確認できなかった情報は入れません。そのうえで、仮説と質問の案を出してもらいます。

以下は、元のページで確認した事実です。この情報だけを根拠にして、

(確認した事実を箇条書きで貼り付け)

この会社が抱えていそうな課題の仮説を3つ挙げてください。 それぞれについて、初回商談で相手に確かめるための質問を1つずつ考えてください。 質問は、相手が「はい・いいえ」ではなく、状況を話しやすい聞き方にしてください。

出てきた案は、あくまでたたき台です。自分の商材と関係のある仮説を1〜2個選び、質問を自分の言葉に直します。

大事なのは、仮説を商談で決めつけないことです。「人手不足でお困りですよね」ではなく、「新しい拠点を増やされていると拝見しました。運営の面で、変わったことはありますか」のように、相手が訂正できる聞き方にします。冒頭の進め方は「商談の最初の5分で何を話す?」で、質問の順番は「営業ヒアリングの質問の順番」でくわしく解説しています。

下調べメモの例

以下は、架空の会社について手順どおりに作ったメモの例です。事実や日付は説明用の架空の設定です。実際のメモには、確認したページのURLを添えてください。商談の前に見返すのは、この程度の量で十分です。

調べる目的:初回商談で、物流の現状を聞き、最初の質問を決める

確認できた事実

  • 〇〇県を中心に、食品の卸売をしている
  • 今年4月に、隣の県に新しい物流センターを開いた(会社のニュースページ)
  • 採用ページで、配送の管理担当を募集している

仮説(本人に確かめる)

  • 拠点が増えて、在庫や配送の管理が複雑になっているかもしれない

最初の質問

  • 「4月に新しい物流センターを開かれたと拝見しました。拠点が増えて、在庫の管理のしかたで変わったことはありますか」

事実と仮説を分けて書いておくと、商談中に「これは確認済みの話か、自分の想像か」で迷わずに済みます。

よくある失敗と直し方

AIのまとめを、確認せずにそのまま話す

いちばん避けたい失敗です。AIは自信がありそうな文章で間違いを書くことがあります。商談で口に出す情報は、必ず元のページで確かめてから使いましょう。

調べた情報を全部話してしまう

下調べをすると、つい「調べてきました」と見せたくなります。でも、商談の主役は相手の話です。調べた情報は、最初の質問のきっかけに1つ使えば十分です。残りは、相手の話を理解するための材料として手元に置いておきます。

商談のあとに、聞いた話をAIに入れてしまう

公開情報の整理と、お客様から聞いた話の整理は別物です。商談で聞いた内容を議事録にまとめたいときは、会社が認めたツールかどうか、入力してよい情報かどうかを先に確認しましょう。

下調べのチェックリスト

  • 会社のAI利用ルールを確認した
  • 使うAIの、入力内容の扱い(学習に使われるか)を確認した
  • 調べる目的を一文で決めた
  • 公開情報だけを入力し、顧客から聞いた話や社外秘の情報は入れていない
  • AIに、情報のもとになったURLを付けてもらった
  • 商談で口に出す情報は、元のページで確かめた
  • 事実と仮説を分けてメモした
  • 仮説を確かめる質問を、自分の言葉で1〜2個用意した

よくある質問

無料のAIを使っても大丈夫ですか

会社のルールで認められていて、入力するのが公開情報だけなら、大きな問題にはなりにくいです。ただ、個人向けの無料プランは入力内容が学習に使われる設定になっていることがあるので、設定を確認しておきましょう。顧客の情報を扱う作業には、会社が契約したツールを使うのが基本です。

AIが「確認できず」と答えたら、どうすればいいですか

ホームページの会社概要やニュースのページを自分で開き、その文章を貼り付けて整理を頼み直します。それでも情報が少ない会社なら、無理に調べ込まず、商談で直接聞く質問に回しましょう。「事前に調べきれなかったので教えてください」と聞くのは、失礼ではありません。

下調べにどのくらい時間をかければいいですか

初回の商談なら、まずは10分を目安にして、最初の質問を用意しましょう。情報の確認が終わらなければ、追加で時間を取ります。大きな案件や、決裁者と会う商談なら、相手の業界のニュースや、競合の動きまで調べる価値があります。時間をかけるほど良いのではなく、最初の質問が決まったら終わりと考えると、ほどよい量に収まります。

まとめ

AIを使うと、商談前の企業調べを短い時間で済ませられます。ただし、AIはまとめ役であって、正しさを保証してくれるわけではありません。入力するのは公開情報だけにし、URLを付けてもらい、口に出す情報は必ず元のページで確かめる。そのうえで、事実と仮説を分け、仮説は商談で本人に聞いて確かめましょう。下調べの目的は、詳しくなることではなく、相手が話しやすい最初の質問を用意することです。

参考にした動画・資料

動画の内容をもとに、編集部が日本の営業向けに要点をまとめ直したものです。発言の全文訳ではありません。

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