商談

断り文句は意外と種類が少ない。よくある9つの反論と、慌てないための準備

「今は必要ない」「予算がない」「他社にお願いしている」。断り文句は無限にあるように感じますが、書き出してみると種類は限られています。海外の営業研修で紹介されている反論の分け方と、その場で慌てないための準備をまとめました。

断り文句は意外と種類が少ない。よくある9つの反論と、慌てないための準備

「今は必要ないです」「予算がないので」「もう他社にお願いしています」。お客様から断られるたびに、何と返せばよかったのかと悩む。営業をしていれば、誰もが通る道です。

この記事は、断り文句を言われると頭が真っ白になってしまう方、反論への返し方を整理したい方に向けて書いています。海外の営業研修で紹介されている考え方をもとに、断り文句の種類と、その場で慌てないための準備をまとめました。

断り文句は、無限ではない

新規開拓の第一人者として知られるジェブ・ブラントは、研修の中で参加者に「お客様が断る言い方は、何通りあると思いますか?」と問いかけるそうです。多くの営業は「無限にある」と答えます。

ところが、実際にホワイトボードに書き出してみると、ある業界では11種類に収まった、と紹介しています。業界や商品によって違いはありますが、よく言われる断り文句は、思っているよりずっと少ないのです。

種類が限られているなら、事前に返し方を準備できます。準備しておけば、断られた瞬間に慌てずに済みます。

まずは、自分がこの1か月で言われた断り文句を、思い出せるだけ書き出してみてください。同じような言葉が何度も出てくるはずです。

断りには3つの段階がある

ブラントは、お客様の断りを3つに分けて考えています。

種類 例 特徴
反射的な返事 「見ているだけです」「間に合っています」 考えずに口から出る言葉。営業を遠ざけるための習慣
かわし文句 「資料を送ってください」「今は忙しいので」 角を立てずに断るために使われることがある。ただし、本当に資料が必要だったり、忙しかったりする場合もあるので決めつけない
本当の反対理由 「以前、似たサービスで失敗したことがある」 お客様の本音に近い。ここに答えることが大切

反射的な返事やかわし文句に、正面から反論しても意味がありません。目指すのは、その奥にある本当の反対理由にたどり着くことです。

よくある9つの反論

講演家のブライアン・トレーシーは、お客様の反論を9つに分けて紹介しています。日本の営業の場面に置き換えて、それぞれへの対応を整理します。

1. 口に出さない反論

不安や不満があるのに、何も言わないケースです。反論がないので順調に見えますが、最後に「今回は見送ります」と言われます。

対応:「どのように」「どんな点が」など、自由に答えられる質問をして、お客様にたくさん話してもらいます。話す量が増えるほど、引っかかっている点が見えてきます。

2. 反射的な言い訳

「間に合っています」「今は必要ありません」など、営業に対して反射的に出る言葉です。個人的な拒絶ではなく、深刻なものでもありません。

対応:言い返さずに、まず受け止めます。トレーシーは、次のような返し方を紹介しています。

「そうですよね。最初にお電話したときは、今のお客様も皆さん同じようにおっしゃっていました。」

ただし、これは事実である場合に限ります。実際にそうしたお客様がいないのに使うと、うそになってしまいます。

3. 八つ当たりの反論

機嫌が悪いお客様が、営業に強く当たってくることがあります。

対応:自分が標的ではないと理解し、落ち着いて、礼儀正しく対応します。言い返さず、今の状況や今後の予定について質問しながら、話を落ち着かせます。

4. 情報を求める反論

「導入にはどのくらいかかりますか?」「効果はどう測るんですか?」といった質問です。

対応:これはいちばん歓迎すべき反論です。お客様が前向きに検討しているからこそ出てくる質問だからです。具体的に、正直に答えましょう。

5. 知識を見せたい反論

業界や商品に詳しいことを示そうと、専門的な質問や指摘をしてくるお客様もいます。

対応:張り合わずに、「お詳しいですね。そこまでご存じとは思いませんでした」と素直に感心します。相手を大切に扱うほど、心を開いてくれます。

6. 営業個人への反論

「あなたの話は分かりにくい」など、営業本人への不満が出ることがあります。

対応:トレーシーは、これを自分の話をしすぎているサインだと言います。話の中心をお客様に戻し、お客様についての質問を増やしましょう。

7. 事実を確かめる反論

「本当にそうなるんですか?」「証拠はありますか?」という反論です。

対応:導入事例やデータで具体的に答えます。この反論は、買う直前に安心材料を求めているときに出ることが多いものです。答えられれば、決まる可能性が高くなります。

8. 最初の警戒心

商談の最初は、どのお客様も「売り込まれるのでは」と身構えています。

対応:トレーシーは、「ひとつ質問してもよろしいですか?」と聞くことを勧めています。お客様が「はい」と答えた時点で、「質問には答えます」と約束したことになり、会話が始めやすくなります。

9. 最後の迷い

価値も価格も分かっていて、決める直前でためらうケースです。

対応:最後の不安を、敬意をもって聞きます。そのうえで、導入しているお客様の様子や、導入後の支援について伝え、安心してもらいます。

断られた瞬間に言う「決まった一言」

断られた瞬間は、誰でも少し動揺します。手に汗をかいたり、言葉に詰まったりするのは自然なことです。

ブラントは、断られた瞬間に反射的に言える決まった一言を用意しておくことを勧めています。その一言を言っている間に、気持ちを立て直せるからです。

「そうですよね。多くの方がそうおっしゃいます。」 「ありがとうございます。そのお話を伺えて助かります。」

決まった一言で落ち着いたら、次の2つを続けます。

  1. 相手の予想を外す:言い返さずに、まず同意する。「今の取引先に満足されているなら、無理に変える必要はありませんよね。」
  2. もう一度、落ち着いてお願いする:「そのうえで、比べる材料として、10分だけお話しさせていただけませんか?」

人は、言い争いで「自分が間違っていた」と思わせることはできません。同意してから、お願いし直すほうが、話は前に進みます。

断り文句ノートをつくる

断り文句への準備は、一人で頭の中でするより、書き出して整理するほうが効果的です。

断り文句 考えられる種類 本当の理由の候補 返し方
今は必要ない 反射的な返事 必要性に気づいていない/優先順位が低い 「どなたも最初はそうおっしゃいます。今は◯◯をどのようにされていますか?」
予算がない かわし文句 価値が見えていない/予算の時期が違う 「来期の予算は、いつ頃お決めになりますか?」
他社にお願いしている 本当の反対理由 乗り換えの手間が不安 「満足されているなら何よりです。比べる材料として、違いだけお伝えしてもよろしいですか?」
資料を送って かわし文句 今は話したくない 「お送りします。御社に合う部分だけ、10分でご説明できる日はありますか?」

このノートは、チームで共有すると効果が大きくなります。誰かがうまく返せた言い方を、全員で使えるようになるからです。

そもそも断られにくくする

研修家のジェフリー・ギトマーは、「考えさせてください」と言われたときに大事なのは、返し方よりも予防だと言います。断りの多くは、商談の途中で防げるからです。

商談のあとで、次のことを振り返ってみましょう。

  • お客様にとって得になる提案になっていたか
  • 買う理由と、急ぐ理由を聞き出せていたか
  • 打ち解けた会話ができていたか
  • 他社との違いを示せたか
  • お客様のこれまでの経験を聞いたか
  • お客様が期待している結果を知っていたか

断られた理由の多くは、このどれかが抜けていたことにあります。

よくある失敗

よくある失敗 直し方
断られた瞬間に言い返す 決まった一言で受け止め、まず同意する
かわし文句に正面から反論する その奥の本当の理由を、質問で探る
毎回、その場で返し方を考える 断り文句ノートをつくり、事前に準備する
返し方を一人で抱えている チームで共有し、うまくいった言い方を広げる
断られたのを相手のせいにする 商談の進め方を振り返り、予防につなげる

具体例:同じ断り文句でも、返し方で変わる

事務機器のリースを提案している営業が、中小企業の総務担当者から「今は必要ないです」と言われた場面です。

言い返してしまう例

担当者「今は必要ないです。」

営業「でも、今のコピー機は古くなっていませんか?新しい機種にすれば、毎月の費用が下がるんです。」

担当者「いえ、本当に大丈夫ですので。」

受け止めてから質問する例

担当者「今は必要ないです。」

営業「そうですよね。多くの方が最初はそうおっしゃいます。ちなみに、今お使いの機器は、いつ頃入れ替えのご予定ですか?」

担当者「リースがあと1年くらいで切れるので、そのときに考えようかと。」

営業「ありがとうございます。それでしたら、半年後くらいに一度、比べる材料だけお持ちしてもよろしいですか?」

「今は必要ない」は、反射的な返事であることが多いものです。受け止めてから質問したことで、「1年後にリースが切れる」という本当の状況が分かり、次の約束につながりました。

よくある質問

返し方を用意しても、その場で思い出せません。

最初は、紙に書いて手元に置いておくのがおすすめです。電話なら画面の横に貼り、対面ならノートに書いておきます。何度も使ううちに、自然と口から出てくるようになります。全部を覚えようとせず、よく言われる上位3つから準備しましょう。

何度返しても断られる場合は、どこまで粘るべきですか?

用意した返しを一度伝えても断られたら、その日は丁寧に引くのが基本です。しつこく食い下がると、信頼を失い、次の機会もなくなります。「では、◯か月後にまたご様子を伺ってもよろしいですか?」と、了承を得られた場合に限って次の約束をしましょう。はっきり断られた相手に、勧誘を続けたり改めて勧誘したりするのは避けてください。個人のお客様向けの電話勧誘では、特定商取引法で禁止されています。

断られることがつらいです。どう考えればいいですか?

断りの多くは、あなた個人への拒絶ではなく、「今は」「この条件では」という意味です。断り文句を種類で分けて考えると、自分が否定されたわけではないと分かり、気持ちが楽になります。断られた数を、行動した証として数えるのも一つの方法です。

まとめ

断り文句は、怖いものではありません。種類が限られていて、事前に準備できるものです。

  1. 断り文句は、書き出すと意外と種類が少ない
  2. 反射的な返事、かわし文句、本当の反対理由の3段階で考える
  3. 「情報を求める反論」は、前向きに検討しているサイン
  4. 断られた瞬間は、決まった一言で受け止めてから、もう一度お願いする
  5. 断り文句ノートをつくり、チームで共有する

まずは今週、言われた断り文句を、その日のうちにメモすることから始めてみてください。1か月後には、自分だけの「返し方の辞書」ができあがっています。

参考にした動画・資料

動画の内容をもとに、編集部が日本の営業向けに要点をまとめ直したものです。発言の全文訳ではありません。

← 記事一覧へ戻る