法律

公正取引委員会、10月に4社へ勧告 代金からの「手数料」の差し引きや、金型の無償保管が問題に

下請法・取適法にもとづく勧告が10月だけで4件公表されました。振込手数料や「事務手数料」名目の差し引き、型の保管費用を払わないことなど、営業の現場でも起こりうる行為が並んでいます。

何が発表されたか

公正取引委員会が2026年10月、製造などを外部に委託している4社に対し、下請法または取適法にもとづく勧告を行ったと公表しました。勧告は、違反行為をやめることや、受注側の事業者が受けた不利益を元に戻すことなどを求めるものです。

2026年1月から、下請法は改正されて「取適法(中小受託取引適正化法)」になりました。原則として、2025年12月までに発注した取引には改正前の下請法が、2026年1月以降に発注した取引には取適法が適用されます。今回の4件も、発注の時期によって適用される法律が分かれています。

主な数字

表の「名」は、取引先の事業者の数です。

公表日 会社(事業) 問題とされた行為 相手方・金額など
10月9日 パーパス(給湯器など) 代金の支払遅延、振込手数料の差し引き、金型の保管費用を負担しなかった 下の本文を参照
10月22日 王子コンテナー(段ボール製品など) 長く発注しない印版・木型・金型を、費用を払わずに保管させた 140名・計9,610個
10月29日 マルゼン(業務用厨房機器) 「事務手数料及び金利」の名目で代金から差し引いた 385名・計6088万8107円
10月30日 日工(ボルトなど) 自社の利益を確保するため、代金から一定率を差し引いた 16名・計1712万8945円

パーパスの件では、次の行為が認定されました。

  • 支払遅延(取適法):手形で支払い、支払期日を過ぎても代金を支払わなかった(11名・計2282万3013円)。この代金はすでに支払われており、公正取引委員会は遅延利息などの支払いを求めています
  • 振込手数料の差し引き:実際の振込手数料を超える額を差し引いた(改正前の下請法、71名・計15万7100円)、振込手数料に相当する額を差し引いた(取適法、85名・計3万3730円)
  • 金型の無償保管:改正前の下請法の対象が10名・132個、取適法の対象が12名・64個

王子コンテナーの件は、中小企業庁の調査がきっかけです。公正取引委員会などは同じ日に、業界団体の全国段ボール工業組合連合会に対して、型などを受注側に無償で保管させる商慣習の見直しを要請しました。調査では、こうした無償保管が業界の商慣習になっていることが確認されたとしています。マルゼンと日工は、差し引いた額の全額をすでに支払っています。

営業職にとってのポイント

  • 金額が小さくても問題になる:パーパスの振込手数料の件は、合計で数万〜十数万円でした。「昔からこうしている」という慣習でも、違反と判断されることがあります
  • 名目を変えても減額は減額:「事務手数料」「金利」などの名目で代金から差し引くことも、今回は代金の減額として扱われました
  • 型や道具の保管も取引条件の一部:発注のない型を相手先に置いたままにしていないか、保管費用をどうするかを話し合っておく必要があります

営業職は、注文を受ける立場(受注側)にも、自社の商品をつくるために外部に委託する立場(発注側)にもなりえます。受注側なら、代金から手数料が引かれている、型の保管を無償で求められているといった場合に、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口に相談できます。発注側なら、取引条件に手数料の差し引きや型の無償保管が含まれていないかを、社内の法務・購買の担当者と確認しておきましょう。

取適法が適用されるかどうかは、取引の内容や、双方の資本金・従業員数などによって決まります。自社の取引が対象になるかは、自分だけで判断せず、社内の担当部署や専門家に確認してください。

取適法の主な変更点

公正取引委員会は、取適法での主な変更点として次のような点を挙げています。

  • 手形による支払いなどの禁止
  • 協議を適切に行わない、一方的な代金決定の禁止
  • 適用の基準に、資本金に加えて従業員数の基準を追加
  • 対象となる取引に、一定の運送の委託(特定運送委託)を追加

次に注目したいこと

  • 勧告の公表:同じ業界の事例が出たら、自社の取引条件を見直すきっかけにしましょう
  • 業界団体の動き:段ボール業界のように、業界全体で商慣習の見直しが求められることがあります。担当業界の団体の発表にも目を向けておくと、お客様との会話にも役立ちます

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