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「高いですね」と言われたら、値引きの前に確かめたいこと。価格ではなく価値を伝える方法

「高い」と言われると、すぐに値引きを考えてしまいがちです。でも、その言葉は「価値が伝わっていない」というサインかもしれません。海外の営業研修で定番の考え方をもとに、価値の伝え方と、価格の話になったときの対応をまとめました。

「高いですね」と言われたら、値引きの前に確かめたいこと。価格ではなく価値を伝える方法

提案の最後に、お客様から「うーん、ちょっと高いですね」と言われる。その瞬間、「値引きしないと決まらないかもしれない」と頭がいっぱいになる。営業をしていれば、何度も経験する場面です。

この記事は、価格の話になると弱気になってしまう方、値引きでしか決めきれないことが多い方に向けて書いています。海外の営業研修で長く教えられてきた「価格ではなく価値を売る」という考え方を、日本の営業で使いやすい形に整理しました。

「高い」は、価値が見えていないサイン

米国の営業研修家ジェフリー・ギトマーは、「価格への反対は、価値が足りない、あるいは見えていないというお客様からのサインだ」と話しています。

お客様が「高い」と言うとき、本当に言いたいことは、次のどれかであることが多いものです。

  • その金額を払う理由が、まだ見えていない
  • 他社と比べて、何が違うのか分からない
  • 予算の上限を超えている
  • 社内で説明する自信がない

予算の制約がある場合もあれば、払うだけの価値が十分に伝わっていない場合もあります。まず、どちらなのかを確かめることが大切です。その状態で値引きをすると、「最初の価格は高すぎたのか」と思われ、かえって信頼を失うこともあります。

人は商品ではなく「結果」を買う

講演家のブライアン・トレーシーは、「人は商品を買うのではなく、商品がもたらす結果を買う」と繰り返し伝えています。

たとえば、勤怠管理システムを買うお客様が欲しいのは、システムそのものではありません。「毎月の集計作業がなくなること」「残業代の計算ミスがなくなること」「担当者が月末に残業しなくて済むこと」です。

トレーシーは、価値を「お客様が得られると感じる利益と、支払う価格の差」と説明しています。利益を大きく感じてもらえれば、同じ価格でも「安い」と感じてもらえます。そして、利益の伝え方は、営業が工夫できる部分です。

価格だけを話すと 結果を話すと
月額5万円です 毎月20時間かかっている集計作業が、ほぼなくなります
他社より1万円高いです 担当者の残業代と比べると、半年ほどで元が取れる計算です
初期費用が30万円かかります 初期設定はすべてこちらで行うので、社内の手間はかかりません

数字を使うときは、お客様から聞いた実際の数字を使いましょう。推測の数字で大きく見せると、あとで信頼を失います。

価値が伝わるのは、商品の性能だけではない

ギトマーは、お客様が価値を感じる領域として、次のような項目を挙げています。

領域 お客様の気持ち
取引のしやすさ 手続きが簡単で、面倒がない
連絡のしやすさ 困ったときに、すぐ担当者につながる
使いやすさ 買ったあと、社員がすぐ使いこなせる
生産性 仕事が速くなる、ミスが減る
サポート 必要なときに、必要な対応をしてもらえる
社員の気持ち 現場の負担が減り、働きやすくなる
価格の妥当さ いちばん安くはないが、払う理由がある
利益への効果 節約だけでなく、売上や利益にどうつながるか
相性 自社にぴったり合っていると感じる
安心感 取引して失敗するリスクがない
買ったあとの情報 使い方や役立つ情報を、継続して届けてくれる

ギトマーは、この中でも安心感を特に重視しています。どれだけ良い商品でも、「導入して失敗したらどうしよう」という不安があれば、お客様は決められません。導入実績、試用期間、導入後の支援など、不安を減らす材料を用意しておきましょう。

提案の前にやっておくこと

価格の話で困らないためには、提案の前の準備が大切です。トレーシーは、次の3つのステップを勧めています。

1. 理想のお客様像をはっきりさせる

自社の商品を、いちばん喜んで、すぐに買ってくれるのはどんなお客様か。業種、規模、担当者の立場などを具体的に思い描きます。お客様像がはっきりしていれば、そのお客様が何に価値を感じるかも見えてきます。

2. お客様の問題を確かめる

自社が解決できる問題は何か。ヒアリングで、お客様自身の言葉で確かめます。トレーシーは、お客様が「問題がある」と思っていなければ、どれだけ良い商品でも買わないと言います。問題がはっきりしていないまま提案すると、価格だけが目立ってしまいます。

3. 利点を書き出す

自社の商品が、お客様の問題をどう解決するかを、すべて書き出します。そのうえで、お客様にとって大事なものを3つ程度に絞って伝えます。

「高い」と言われたときの対応

それでも「高い」と言われたら、すぐに値引きを口にせず、まず中身を確かめます。

まず受け止める

「ありがとうございます。大事な点なので、率直におっしゃっていただけて助かります。」

「いえ、高くないです」と言い返すと、相手は守りに入ります。まず受け止めましょう。

何と比べて高いのかを聞く

「差し支えなければ、どのあたりと比べて、高いとお感じになりましたか?」

他社の見積もりと比べているのか、予算と比べているのか、今のやり方の費用と比べているのか。比べている相手によって、返し方が変わります。

比べている相手 返し方の方向
他社の見積もり 何が含まれているかの違いを、項目ごとに比べる
社内の予算 支払い時期や、導入範囲を小さくして始める方法を考える
今のやり方の費用 今かかっている時間や手間を、お客様と一緒に計算する

3つの点を順に確かめる

営業研修家のビクター・アントニオは、迷っているお客様に、次の順で確かめる方法を紹介しています。

  1. 合っているか:「ご要望には合っていますか?」
  2. 機能は十分か:「必要な機能はそろっていますか?」
  3. お金の面か:要望と機能が合っていることを確認したら、予算や支払い条件が気になっているかを尋ねる

人は「お金がない」とは言いにくいものです。この順で聞くと、角を立てずに理由を確かめやすくなります。導入の時期、社内の承認、運用の負担、失敗への不安など、お金以外の理由が残っていないかもあわせて確認しましょう。お金の問題だと分かれば、支払い時期を後ろにずらす、分割にする、まずは一部の部署から始める、といった提案ができます。

値引きするなら、条件と一緒に

どうしても価格を調整する場合は、何も変えずに下げるのではなく、条件と組み合わせます。

「導入する部署を、まず営業部だけにしていただければ、この金額でご提案できます。」 「年間契約にしていただければ、月額をこの金額にできます。」

条件なしの値引きは、「言えば下がる」と思われ、次の交渉でも同じことを求められます。

よくある失敗

よくある失敗 直し方
「高い」と言われた瞬間に値引きを提案する 何と比べて高いのかを、まず聞く
商品の機能ばかり説明する お客様が得られる結果を、お客様の数字で伝える
推測の数字で効果を大きく見せる ヒアリングで聞いた実際の数字を使う
条件なしで価格を下げる 導入範囲や契約期間などの条件と組み合わせる
不安を減らす材料を用意していない 導入実績、試用、導入後の支援を準備しておく

チェックリスト

  • お客様の問題を、お客様の言葉で確かめたか
  • 価格より先に、お客様が得られる結果を伝えたか
  • 効果の数字は、お客様から聞いた実際の数字か
  • 導入の不安を減らす材料を用意したか
  • 「高い」と言われたら、何と比べてかを聞いたか
  • 値引きをするなら、条件と組み合わせたか

具体例:「高い」と言われた商談の進め方

社員研修のサービスを提案した営業が、人事部長から「高いですね」と言われた場面です。

部長「内容は良いと思うんですが、ちょっと高いですね。」

営業「ありがとうございます。大事な点なので、率直におっしゃっていただけて助かります。差し支えなければ、どのあたりと比べて高いとお感じになりましたか?」

部長「去年、別の会社に頼んだ研修より、2割くらい高いんですよ。」

営業「そうでしたか。去年の研修では、受講後にどんな変化がありましたか?」

部長「正直、その場は盛り上がったんですが、現場ではあまり変わらなかったですね。」

営業「そこは大事なところですね。今回のご提案では、研修後の3か月間、現場の上司の方と一緒に実践を確認する時間を含めています。研修だけで終わらせない分、費用はかかっていますが、去年のように『その場だけ』で終わらないようにするための部分です。」

この営業は、すぐに値引きをせず、比べている相手(去年の研修)を聞き出しました。そのうえで、去年の研修で得られなかった結果と、今回の提案で得られる結果の違いを伝えています。

よくある質問

競合が明らかに安い場合はどうすればいいですか?

まず、価格に何が含まれているかを、項目ごとに比べてみましょう。初期設定、導入後の支援、保守の範囲などが違えば、単純な比較はできません。それでも価格差を埋められない場合は、無理に競わず、自社の強みが生きるお客様に注力するという判断も大切です。

最初から価格を聞かれたらどうすればいいですか?

おおよその範囲だけを伝え、「御社の状況によって変わるので、まず少しお話を伺えますか?」と、状況を聞く方向に戻します。価値が伝わる前に金額だけが一人歩きすると、それだけで判断されてしまいます。

値引きを社内で認めてもらうコツはありますか?

値引きの理由を、お客様の状況と、得られる条件(契約期間、導入規模、支払い方法など)とセットで説明しましょう。「言われたので下げたい」ではなく、「この条件なら、会社にとっても利益がある」と示せると、社内の理解も得やすくなります。

まとめ

「高いですね」は、商談の終わりではありません。お客様が、価値と価格を比べ始めたという合図です。

  1. 「高い」は、価値が見えていないサインであることが多い
  2. 人は商品ではなく、商品がもたらす結果を買う
  3. 価値は性能だけでなく、安心感や取引のしやすさからも生まれる
  4. 「高い」と言われたら、まず何と比べてかを聞く
  5. 値引きは最後の手段。するなら条件と一緒に

次の提案では、価格を伝える前に「この提案で、何がどう変わるか」を一枚にまとめてみてください。価格の受け止められ方が変わるはずです。

参考にした動画・資料

動画の内容をもとに、編集部が日本の営業向けに要点をまとめ直したものです。発言の全文訳ではありません。

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