商談

売れる営業は、話すより「待つ」。商談で信頼を失う7つのくせと直し方

早口、説明のしすぎ、沈黙を埋めようとする。自分では気づきにくい話し方のくせが、お客様の警戒心を強めているかもしれません。海外の営業研修で人気の考え方をもとに、商談で落ち着いて見える話し方と、すぐに試せる直し方をまとめました。

売れる営業は、話すより「待つ」。商談で信頼を失う7つのくせと直し方

商談で一生懸命に説明したのに、お客様の反応が薄い。質問しても、表面的な答えしか返ってこない。そんな経験はないでしょうか。

原因は、話の中身ではなく、話し方のくせにあるかもしれません。早口になる、説明を重ねすぎる、沈黙が怖くてすぐに話してしまう。こうしたくせは、自分では気づきにくいものです。

この記事は、商談でつい話しすぎてしまう方、お客様に本音を話してもらえないと感じている方に向けて書いています。海外で人気の営業研修家ジェレミー・マイナーの考え方をもとに、商談で信頼を失いやすい7つのくせと、その直し方をまとめました。

「必死さ」は相手に伝わる

マイナーは、「相手から何かが欲しいと伝わった瞬間に、会話は不利になる」と話しています。

営業が「この案件をどうしても決めたい」と思っていると、その気持ちは、声の速さや言葉の選び方、しぐさに出ます。お客様はそれを感じ取り、「売り込まれる」と身構えます。

マイナーが勧めるのは、助けたい気持ちは強く持ちながら、結果へのこだわりは手放すという姿勢です。問題を抱えているのはお客様で、自分はそれを解決できるかもしれない立場にいる。決めるのはお客様。そう考えると、自然と落ち着いた話し方になります。

以下の7つのくせは、どれも「結果にこだわりすぎている」ことから生まれます。

くせ1:言った後に、すぐ同意を求める

大事なことを伝えた直後に、自信なさげに「分かりますか?」「よろしいでしょうか?」と確認していないでしょうか。

これを繰り返すと、お客様に「この人は自分の話に自信がないのかな」と感じさせてしまいます。

直し方:要点を伝えたら、少し間を置きます。お客様の考えを聞きたいときは、確認ではなく、興味を持って質問します。

「この点について、御社ではどうお考えですか?」

くせ2:早口になる

緊張したり、反論されたりすると、話すスピードが上がります。マイナーは「速さは焦りの表れ」だと言います。早口で機能や事例を次々に説明されると、お客様は「売り込まれている」と感じます。

直し方:話す速さを、いつもより2割ほど落とします。一つの文を言い終えて、相手に届いてから次の文に進むイメージです。説得したくなったら、説明を重ねる代わりに、質問を一つします。

「今の状況と比べて、どうでしょうか?」

くせ3:反論されると、すぐ言い返す

「価格が高い」と言われた瞬間に、価格の理由を並べ立てていないでしょうか。すぐに価格の正しさを説明し始めると、相手が何を気にしているのかを確かめないまま、反論を重ねてしまいがちです。

直し方:反論されたら、1秒だけ間を置いてから、落ち着いて質問します。

「どのあたりが気になりましたか?」

理由が分かってから答えるほうが、的確に返せます。

くせ4:説明しすぎる

相手を納得させようとするほど、説明が長くなります。でもマイナーは、説得しようとすればするほど、相手は反発すると言います。人は、他人に言われたことより、自分で気づいたことに納得するからです。

マイナーは、商談のうち営業が一方的に説明する時間は、ごく一部にとどめるべきだと話しています。多くの営業は、商談の半分近くを自社や商品の説明に使ってしまっている、と。

直し方:要点は一度だけ、はっきり伝えて止めます。そのあとは、お客様が自分で考えられる質問に切り替えます。

「この方法を取り入れたとしたら、現場ではどんな変化がありそうですか?」

お客様が自分の言葉で「こうなりそうだ」と話してくれたら、それは何より強い説得材料になります。

くせ5:落ち着きのないしぐさ

足をゆする、ペンを回す、顔や首を触る、うなずきすぎる。こうしたしぐさは、自分では気づかなくても、相手には「落ち着いていない」と伝わります。

直し方:マイナーが勧めるのは、オンライン会議の録画を、音を消して見返すことです。話の中身に気を取られずに、自分の動きだけを見られます。多くの人は、自分の動きの多さに驚くそうです。

身ぶりをなくす必要はありません。意図して使う身ぶりは、話を分かりやすくします。減らしたいのは、無意識の動きです。

くせ6:話を遮る

お客様の話の途中で、「それなら、こういう方法があります」と口を挟んでいないでしょうか。遮られたお客様は、「自分の話より、営業の話のほうが大事なんだ」と感じ、心を閉ざします。

直し方:最後まで聞きます。話がそれたり、答えが表面的だったりしたときは、遮るのではなく、確認の質問で話を戻します。

「先ほどおっしゃった◯◯というのは、具体的にはどういうことでしょうか?」

口を挟みたくなったら、「自分の言いたいことを言うためか、相手をもっと理解するためか」と一瞬考えてみてください。

くせ7:沈黙を埋めようとする

質問したあとの沈黙に耐えられず、質問を言い直したり、自分で答えてしまったりしていないでしょうか。

マイナーは、質問のあとの沈黙こそが、商談でいちばん大切な時間だと言います。お客様は、その沈黙の間に深く考え、普段は口にしない本音に気づくからです。

直し方:質問したら、黙って待ちます。5秒、10秒と長く感じても、待ちます。お客様が話し始めたら、最後まで聞きます。

7つのくせのチェック表

くせ 起きていること 直し方
同意を求める 自信がないように見える 言い切って、間を置く
早口 焦りが伝わる 速さを2割落とす
すぐ言い返す 反論が本当の問題に見える 1秒置いて、質問する
説明しすぎる 相手が反発する 一度言ったら、質問に切り替える
落ち着きのないしぐさ 不安が伝わる 録画を音なしで見返す
話を遮る 相手が心を閉ざす 最後まで聞き、確認の質問で戻す
沈黙を埋める 相手が考える時間を奪う 質問したら、黙って待つ

質問を準備しておく

話しすぎを防ぐいちばんの方法は、良い質問を準備しておくことです。

研修家のジェフリー・ギトマーは、「お客様がまだ聞かれたことがなく、競合も聞いていない質問」をリストにしておくことを勧めています。考えさせる質問をするほど、お客様は営業を信頼し、本音を話してくれるようになります。

質問をつくるときは、次の観点で考えると広がります。

  • 今の状況:「今は◯◯をどのように進めていますか?」
  • 困りごと:「その中で、いちばん手間がかかっているのはどこですか?」
  • 影響:「それが続くと、どんなことが起きそうですか?」
  • 理想:「どうなっていたら、理想的ですか?」
  • 決め方:「こうしたことは、社内でどのように決まっていきますか?」

マイナーは、問題を解決する前に、まずお客様自身が問題に気づけるよう手伝うことが大切だと言います。お客様は、最初から自分の問題をすべて分かっているわけではないからです。

中立的な言葉で始める

商談の最初に、「本日は必ずお役に立てるご提案をお持ちしました」と言い切ると、お客様は身構えます。

マイナーは、最初は中立的な言葉を使うことを勧めています。

「今日はまず、今の状況を伺って、お役に立てそうかどうかを確認させてください。もし合いそうであれば、最後に次の進め方をご相談できればと思います。」

「もし」「かもしれない」と控えめに言うことで、お客様は安心して話してくれます。話が進み、お客様の問題がはっきりしてから、自信を持って提案すればいいのです。

練習の方法

くせは、意識するだけではなかなか直りません。次の方法で練習してみてください。

  1. 商談の録音や録画を見返す(お客様の許可を得たうえで)
  2. 自分が話している時間を計る:お客様より長く話していたら、話しすぎのサイン
  3. 一つのくせに絞って直す:今週は「早口」、来週は「沈黙を待つ」というように
  4. 同僚に見てもらう:自分では気づかないくせを指摘してもらう

具体例:話しすぎる商談と、待てる商談

社内の情報共有ツールを提案する営業が、ある会社の部長と話している場面です。

話しすぎる例

営業「このツールを使えば、チャットもファイル共有もタスク管理もすべてできます。さらに、スマホにも対応していて、外出先からでも……。それから、セキュリティ面も万全で……。いかがでしょうか?」

部長「なるほど。一度、社内で検討します。」

待てる例

営業「今は、社内の情報共有をどのように進めていらっしゃいますか?」

部長「メールと、部署ごとの共有フォルダですね。」

営業「その中で、いちばん手間がかかっているのはどこでしょう?」

部長「……(少し考えて)そうですね、最新のファイルがどれか分からなくなることかな。先月も、古い見積もりをお客様に送ってしまって。」

営業「それは大変でしたね。そのとき、どんな影響がありましたか?」

後者の営業は、ほとんど商品の説明をしていません。質問をして、部長が考える時間を待ったことで、「古い見積もりを送ってしまった」という具体的な困りごとが出てきました。この困りごとに合わせて説明すれば、商品の価値はずっと伝わりやすくなります。

よくある質問

沈黙が続くと、気まずくなりませんか?

最初は気まずく感じるかもしれません。でも、お客様にとっては、考えるための大切な時間です。5秒ほど待っても話が出てこなければ、「難しい質問でしたね。たとえば、◯◯のような場面はありますか?」と、答えやすい形に言い換えてみましょう。

お客様があまり話さない方の場合はどうすればいいですか?

答えやすい質問から始めましょう。「今は◯◯をどのようにされていますか?」のように、事実を聞く質問は答えやすいものです。少しずつ話してもらえるようになったら、困りごとや理想を聞く質問に進みます。

説明が必要な商品の場合も、話を減らすべきですか?

説明そのものが悪いわけではありません。大切なのは、お客様の困りごとを聞いてから、それに合わせて説明することです。聞く前に説明を始めると、お客様にとって関係のない話が多くなってしまいます。

まとめ

商談で信頼されるのは、うまく話せる人ではなく、落ち着いて聞ける人です。

  1. 「必死さ」は相手に伝わる。助けたい気持ちは強く、結果へのこだわりは手放す
  2. 早口、説明しすぎ、すぐ言い返すのは、焦りのサイン
  3. 質問したら、沈黙を恐れずに待つ
  4. 良い質問を準備しておくことが、話しすぎを防ぐいちばんの方法
  5. 商談の最初は、中立的な言葉で始める

次の商談では、「質問したら、5秒待つ」だけを意識してみてください。お客様が話してくれる量が、きっと変わります。

参考にした動画・資料

動画の内容をもとに、編集部が日本の営業向けに要点をまとめ直したものです。発言の全文訳ではありません。

← 記事一覧へ戻る